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背中のS字は男の色気

「男は背中で語るもの」なんて言葉がありますが、確かに男性の背中というのは、その内面までも伝えてしまうような「表情」を持っています。スーツの後ろ姿も、着ているあなたには見えなくても、あなた以外の周囲にたくさんのメッセージを発しているかもしれません。あなたはスーツを着たとき、自分の後ろ姿までチェックしていますか?横からの姿は、鏡を見れば自分でもすぐにチェックできますね。でも、後ろ姿を鏡に映して振り返って見ても、背中にシワが寄ってしまうので、自分ひとりでチェックすることはできません。販売員などの他の人から見てもらうか、前だけでなく後ろにも鏡を用意してもらいチェックするようにしましょう。適度にウェストが絞られたスーツであれば、横から見ると背中の膨らみから腰にかけてS字ラインが描かれます。このS字は、ほとんどが直線のラインで構成されているスーツの中にあって、唯一大きい曲線が描かれる部分です。他の部分が直線であれば曲線はそれだけ強調されるわけで、カチツとしたスーツスタイルにそこはかとない「色気」を添えるところといえます。

数ある女優さんの中でおしゃれ上手な人は誰

数ある女優さんの中でおしゃれ上手な人は誰かしらね、と。書き始めたらどんどん彼女に対する理想像が膨らんできたのだ。『チープ・シック』『ELLE』を改めて見ると、もっと気持ちが高ぶり、私の女神よ、この人は、と興奮さえ覚えるのであるからおかしな話だ。いずれにしても、たおやかでいて健康そうな肢体、幸せそうな笑顔、年齢を問わない様々な表情、ゴージャスなものを普通に、普通のものを高級にと着こなせて、生き生きとした暮らしを感じさせてくれる女性なのだ。おしゃれをするとき、魅力的でありたいとき、彼女を見習い彼女に近付く、とお念仏のように唱えるといいかもしれない。とはいうものの、出演映画も少ないし、現役のモデルではないから、ファッション誌でお目にかかれるのもまれ、もう少し身近な人に理想像を求めるほうがいい。テレビで見る人、雑誌で見かける人、それも日本人、もっと近くで、知人、姉や母親などとなれば幸せだけどね。おしゃれ上手な人は、おしゃれ上手を高める上での素敵なお手本だ。

人の正体を見えにくくしてしまうスーツ

一九九九年七月十六日金曜日の朝日新聞の朝刊にこんな記事が掲載されていた。「名古屋のホームレススーツ姿で『私は五木ひろし後援会役員』」。事件の概要は次のとおり。逮捕されたのは、名古屋市内の劇場「御園座」の近くの公園で生活する六十三歳のホームレス。五木さんが興行中と知り、スーツに着替えて弁当店に入り、五木ひろし後援会役員を名乗って店主から「協賛金」二万円を詐取。さらに、後援会員用の弁当として、当月二日から毎日朝晩、四十食をつけで注文、逮捕された十五日朝までの計二十七回、一千八十食分(計九十七万円相当)の弁当を店で受け取り、仲間に安く売ったり譲ったりしていたとのこと。ホームレスでもスーツはちゃんと持っている。思わず笑いを誘われてしまうのであるが、あらためて考えてみるまでもなく、詐欺行為をもくろんだこのホームレス氏にとってスーツはれっきとした「仕事」道具である。実際、「スーツを着た男=社会的立場のある男」に化けたホームレス氏は、弁当店主をまるまる二週間もの間、すっかり信用させることに成功した。(バレたのは、十七日は三百七十五食ほしい、などと突然注文を増やしたりしたためである。店主が御園座に配達の問い合わせをして発覚してしまった)。もちろん、五木ひろし様のご威光も大きかったにちがいないけれど、もしもホームレス氏がポロシャツやTシャツ姿だったら、たとえその服が清潔でおしゃれであろうと、この「仕事」は、これでどうまくいったかどうか。スーツ姿だからこそ成功した詐欺であろう。それでは、このホームレス氏が着たのはどんなスーツだったのだろう?「押し出しのよい紳士風」の詐欺師がまとった「仕事着」は、次のようなものであったらしい。明るいベージュの上下ぞろい。ノーネクタイ。中は白地に草模様(唐草ではない)の開襟スポーツ・シャツ。スーツの下にはカジュアル・シャツにノーネクタイ、というのが意外ではあったが、実はこれこそプロ中のプロの装いではないのかとはっとさせられる。落とす相手はお弁当屋さんである。オフィス・ビルの最上階の一室で商談する社長さんではない。しかも、名乗るのは演歌歌手の後援会役員である。これくらいカジュアル・ダウンした、「いかにも略式の、しかしきちんとした感じは残した社会人ウェア」のほうが、かえって相手に親近感と信頼感を与えたであろうことは、容易に想像がつく。この場合、信頼感を補強している根拠のひとつに、装いを適度にカジュアル・ダウンできるのは、ふつう社会的地位が上にある人である(あるいは、上にある人に見える)という事実もある。この詐欺師、こんなスーツの微妙な着崩しの効果まで熟知していたとは、なかなかやるではないか。あるいはひょっとすると、手元にたまたま残っていたその組み合わせが偶然、詐欺的効果にぴたりと役立った服だったのかもしれない。相手が問い合わせをせざるを得ないような数の弁当を注文してしまう、というおまぬけぶりから察すると、後者の可能性が大ではあるが。この話には後日談がある。この弁当詐欺師、逮捕された際には「五年前からホームレスをしていた」と自供し、いったん刑事さんたちもそれを信用しかけたらしいが、その後、「ホームレスらしからぬ」服装に不審を抱いた刑事がさらに調べた結果、男はホームレスなどではなく、勤務先のパッチンコ店のカネを持ち逃げして逃走中だったことが判明したのである(同年八月二十四日火曜日の朝日新聞夕刊)。それでもこの話が侮れないのは、刑事さんたちがいったんは本人の供述通り、「弁当詐欺師はホームレス」とマスコミに発表してしまったこと、つまりだまされてしまったことだ。プロの刑事にさえ、人の正体を見えにくくしてしまうスーツ、おそるべし。


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