梅雨も明けたある日、一向に室内が冷えないので窓を明けながら真夏の暑さに耐えつつ走っていた。どうやらエアコンが壊れてしまったようだ。とりあえずその日の用事を終わらせるまで暑さをガマンし、閉店間近のディーラーに飛び込んだ。症状を説明すると、「たぶんエバポレーターでしょう。交換するだけなので部品さえあればすぐに直ります。ま、走行距離からみて寿命かもしれません」。その日はクルマを預けて帰宅。翌日の夕方には修理完了の電話があり、引き取りにディーラーへ立ち寄った。問題のエバポレーターの金額は昨日あらかじめ聞いており、高くは感じなかったが工賃がそれとまったく同じ金額ということにむしろ驚いてしまった。同時にクーラーガスも新たに充填したため、修理にかかった費用はトータルで四万円を少しばかりオーバーしてしまった。しかし、その帰り道はしっかりと冷えた冷気を浴びながら気持ちよくハンドルを握っていた。三日後、クルマに乗るとまたエアコンがダメ。冷えないのである。おかしいではないか、ということでさっそくディーラーへ直行し、説明を求めた。じつは先日のエバポレーター修理のときにこのユーザーは、交換した部品を確認してなかった。というよりも工場側はハナからそんなものを見せる気がなかったようだ。あくまでも請求伝票だけで説明するのみ。こういうところは交換した部品を見せてくれるトヨタディーラーのほうがしっかりしている。「三日前に直したばかりのエアコンがぜんぜん冷えないというのはおかしいではないか」と責め寄ると、「ガスが抜けたのかな?調べて見ます」といって工場のリフトに乗せてチェックを始めた。数分後、「ガスが入ってないので、たぶんコンプレッサーがいかれたんだと思います」「だったら先日のエバポレーターの修理はなんだったの?そんなもの交換しないで最初からコンプレッサーを交換すればそれで済んだんじゃないの?もしかして余計な修理をしたのだろう?」その若いメカニックは自分の手には負えないとみて、「工場長を呼んできます」と逃げた。代わりに工場長が登場。いわく「これはですね、エアコンの寿命です。エバポレーターがいかれたということはエアコンの構成部品であるコンプレッサーとクラッチ、コイルも同様に寿命時期になっており、いつ交換してもおかしくないということです」。エアコンの効かない夏のクルマほど辛いものはない。いずれにしても直さないことには乗れないのだ。修理を依頼して引き上げた。本来ならコンプレッサー修理だけを依頼するつもりだったが、「寿命に差しかかっているので、コンプレッサーが直ってもすぐにクラッチとコイルの修理が必要になるかもしれません」と脅かされた。結局「クラッチやコイルを別々に修理するとその度に工賃がかかりますが、一緒なら工賃も一回で済みます」と言われ、一緒に修理・交換してもらうことになった。ただ、不思議だったのは「前回(エバポレーター)修理をしているのでガスの充填は無料で結構です」のひとことだった。このユーザー、「きっとしなくてもいいエバポレーターの修理で儲けたからだ」といまでも信じて疑わない。肝心の修理費はコンプレッサーが四万四六〇〇円、クラッチが一万二二〇〇円、コイルが四七五〇円、工賃が一万六五〇〇円で消費税を入れると八万一九五二円となった。先日のエバポレーターを加算すると一二万円オーバーである。エアコンを新規に装着したのと同じ金額である。じつはこのクルマ、軽自動車である。しかし、「軽自動車だから壊れたのか?」と問うユーザーに対して工場長いわく、「シビックでもアコードでも同じです。七万キロ近くも走ればもう寿命ですよ」。知り合いでカリーナに八万キロ乗っているユーザーがいる。新車からエアコンに関しては一度も故障したことがないという。これがメーカー間における実力の差なのである。トヨタ車には一般的に走るおもしろさはないと言われているが、この例を見るまでもなく製品としての完成度は高いと言わざるを得ない。ホンダ車は走る楽しさが満載されているが、商品としての信頼度では劣っているのかもしれない。いずれにしても交換した部品は、催促しなくてもユーザーに見せるのが親切というものである。もし修理をしても見せてくれなかったら堂々と請求、催促してユーザーの権利を主張すべきだ。是非、以上のことを考えて、車検を受けてもらいたい。
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